三十数年生きてて
父とサシで話すことなんてなかった。
家では一言も喋らなかった厳格で寡黙な父だった。
高校生くらいまで、素行が悪いと
平手打ちでパンパン叩かれて育った。
反抗すると、その数倍も怒られて叩かれてきた。
そんな父と初めて2時間くらい話すきっかけがあった。
仕事でどうしようもなく辛くなったとき
父の顔が浮かび、突然電話をした。
娘からの初めての突然の電話に「結婚か?それとも何かあったのか?」
と、相当心配していたようだが、
本当に父に会いたかっただけだと告げると
結婚かと思っていたようでかなり肩すかしでずるっとコケていたが
深刻なことでないことがわかって安堵もしてくれた。
そんな感じで64歳の父と35歳の娘は
父の職場の父の部屋で
お互い照れながら、でも思いのほか自然に話が進んでいった。
家で見ていた父とはまったく違い
とても優しく、話は面白くてユーモアがあり、大人の貫禄と余裕がある一方で
信念や野心や希望や教育や気遣いや愛情はとても高く深く
人間として素晴らしいと思った。
何もかもが尊敬できるオヤジで
私は、きっと親を超えることなんてできないと思わせる父。
カメラを始めるきっかけ(環境)を作ってくれたのも父。
また写真を再開したことに心から応援してくれている。
「お父さんとお父さんが働く部屋が撮りたい」
いきなりのリクエストにもすんなり承諾。
2回目の訪問。
お互い照れながら撮り始めたが
父にカメラを向けながらいろんなエピソードが出てくる。
ーなんで写真始めたのか?
ー学生時代バンドをやってて、学園祭のライブポスターのモデル撮りを頼まれて
街で声をかけた一般女性にモデルになってもらい初めてポートレートなるものを撮った。
100枚撮って自分で現像したら、頭で描いていたイメージの写真が
かろうじてたった1枚しか撮れなかった。
100枚撮って1枚の難しさと奥深さに魅了されたそうだ。
ーポートレート撮ることは?
ー実はとても苦手。どちらかというとドキュメンタリー的な写真が好き。
でもポートレートは苦手だけど嬉しいこともあった。
それは30年前に友達に頼まれて見知らぬ女性の見合い写真を撮ったことがあり、
(レフ版のかわりに白い傘を使用し、また100〜200枚撮ったそうだ)
撮った本人はそのことをすっかり忘れていたが、
先日たまたま入った飲食店の奥さんがずっと自分を見てるので初めて会った気がしなくて
「どこかでお会いしましたか?」と尋ねたら 、
その写真の女性ご本人で
「あなたの写真で見合いをした今の旦那がこの人(店のマスター)なんです。」
という事があったそうだ。
そんな父にILの制作写真集を見せた。
「。。。まぁ、いいなと思ったのは4切りの1枚。理由は光の描写がまあまぁだから。
あとは、ま、がんばったな」とばっさり。家族は容赦ない。気持ちいいけど。
そして
「人が入ってなかったのが残念だな。お父さんは前の写真集のほうがすきだよ。
今度はまた人を撮ってみたらどうだ。」とも。
作品展ももちろん大事である。
こちらは独りよがりにならずに沢山撮ってなんとか出せるレベルの作品が撮れるようにがんばりたい。
そしてまた娘として
父との交流再開をきっかけに父の写真を撮り続けたいと思う。